
学習コラム
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244,940人。
この膨大な人数は、文部科学省が公表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」に記載されている、令和3年度の小・中学校における不登校児童生徒の人数です。
文部科学省によると、この不登校の人数は過去最多であり、9年連続で増加しているとのこと。
不登校の人数がこれほどまでに増加している背景や、現在の対策はどうなっているのでしょうか。
今回は、文部科学省の最新データや私の不登校支援経験をもとに詳しくご紹介します。
もくじ
1.増え続ける不登校の人数
上記でも少しご紹介しましたが、令和3年度の小・中学校における不登校児童生徒の人数は、244,940人でした。
令和2年度は196,127人であったため、1年で大幅に増加していますね。
また、児童生徒1,000人当たりの不登校児童生徒数は25.7人という調査データも公表されています。
この人数を見ると、不登校というのはまったく珍しいものではありませんし、他人事とも言えません。
では、不登校の人数や傾向、不登校の原因、さらには対策についてもう少し詳しく見ていきましょう。
不登校の人数・割合とその傾向
令和3年度の小学校における不登校児童の人数は、81,498人(1000人当たり13人)。
また、中学校における不登校生徒の人数は、163,442人(1000人あたり50人)でした。
中学生の不登校人数の多さが目立ちますね。
さらに、不登校の児童生徒のうちの55%が90日以上欠席しているというデータもあります。
小・中学校は義務教育ですから、このような欠席日数であっても極論、進級に差し支えはありません。しかし、不登校の当事者であるお子さまや保護者様は、高校進学以降という将来的なことが心配になるでしょう。
また、不登校人数を学年別に見ると、以下のようになっています。
出所:令和3年度「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」をもとにサブスタ作成
不登校の人数は、学年が上がるごとに増えていることが顕著ですよね。
不登校の原因については次項でさらに詳しくご紹介しますが、一般的に学年が上がるごとに増える悩みと、不登校には関連があるようです。
2.不登校人数の内訳は?原因を考察
文部科学省は、不登校の原因を以下の3つに分類しています。
①学校に係る状況(学校が原因の不登校)
②家庭に係る状況(家庭環境や家庭で起きた問題が原因の不登校)
③本人に係る状況(学校・家庭いずれも関係のない本人の問題が原因の不登校)
原因の詳細は、以下の表の通りです。
令和3年度 児童生徒全体における不登校の原因 | ||
学校が原因の不登校 |
いじめ | 0.20% |
いじめを除く友人関係をめぐる問題 | 9.70% | |
教職員との関係をめぐる問題 | 1.20% | |
学業の不振 | 5.20% | |
進路に係る不安 | 0.60% | |
クラブ活動、部活動等への不適応 | 0.30% | |
学校のきまり等をめぐる問題 | 0.70% | |
入学、転編入学、進級時の不適応 | 3.30% | |
家庭が原因の不登校 | 家庭の生活環境の急激な変化 | 2.60% |
親子の関わり方 | 8.00% | |
家庭内の不和 | 1.70% | |
本人が原因の不登校 | 生活リズムの乱れ、あそび、非行 | 11.70% |
無気力、不安 | 49.70% |
出所:令和3年度「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」をもとにサブスタ作成
それぞれの不登校の原因のうち、代表的なものを掘り下げ、背景を考察してみます。
学校が原因の不登校
学校が原因の不登校では、「友人関係のトラブル」が大きな割合を占めていますね。
学校は、勉強の場であることはもちろんですが、同学年の友人と過ごしながら対人関係を学ぶ場でもあります。
学年が上がるごとに友人も増え、その関係が複雑になってくるとトラブルも起こりがちですよね。
特に中学生の時期には、お子さまたちの間でグループが形成されたり、目には見えないグループ間の序列があったりするため、お子さまはときに過酷な環境を経験することもあります。
“スクールカースト”と呼ばれるこの環境が苦しく、学校に通いたくなくなってしまうことは容易に想像ができますよね。
家庭が原因の不登校
家庭が原因の不登校では、「親子の関係」が不登校の要因になっていますね。
たとえば、両親の離婚や再婚といった家庭の出来事もお子さまの不登校に影響するようです。
そのほか、“不登校の子どもをもつ母親の特徴は?子どもに与える影響や対策もご紹介”の記事でも取り上げていますが、ときにはお子さまと保護者様との関係や、お母様の特徴が不登校に影響を与えることもあります。
中には、保護者様が直接の原因になっているのではなく、保護者様とのかかわりの中で培われた価値観や性格が友人関係に支障をきたす原因になっているというケースもあるのです。
本人が原因の不登校
本人が原因の不登校の中で圧倒的なのは「無気力、不安」によるもの。
たとえば、成績不振や部活動の悩みなどで躓いたときに「何をやっても駄目だ、上手くいかない」と悲観的になってしまい、登校する気力が湧かない場合があります。
また、思春期を迎えたお子さまが進路やその先の将来に漠然と不安を抱え、何も手につかなくなるケースは珍しくありません。
身体も心も急速に成長し、子どもと大人の狭間のような難しい年頃…。
“思春期”、“青春”と言えば聞こえはよいですが、当事者のお子さまは大いに葛藤し、悩む時期でもあるのです。
しかし、悩み、躓くという経験は誰しもが経験しますよね。
そして大抵の人は悩みながらも試行錯誤し、なんとか乗り越えていきます。
では、乗り越えられる場合と乗り越えられなかった場合の違いは何でしょうか?
それは、それまでの人生の中で「失敗しても頑張れば上手くやれた」という、いわゆる成功体験や、保護者様や他者から認められたという“自己肯定感”が得られているかどうかが鍵となります。
つまり、“本人が原因の不登校”と一口に言っても、その背景には、育った環境や性格が大きく影響しているのです。
3.不登校人数減少に向けた取り組み
このように不登校の人数が増加している現状を打開し、不登校の児童生徒を支援するための動きが広がりを見せています。
国はどのように不登校人数の問題にアプローチし、具体的にはどのような取り組みがされているのかご紹介します。
不登校問題に関する国の方針
令和元年に文部科学省初等中等教育局長から全国の教育委員会や各都道府県知事に向けて「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知がなされました。
その内容を要約すると、以下のようになっています。
①不登校支援では、必ずしも「学校登校」を最終ゴールとしない
②児童生徒が自ら主体性をもって進路に向き合い、自立することを目指す
③児童生徒によっては、不登校という期間が重要な休息期間でとなる場合があるが、不登校によって生じる勉強の遅れ、進路選択の不自由などのリスクを念頭に置く必要がある
考え方としては、“学校登校”に強くこだわるのではなく、不登校であっても児童生徒が主体性を持って自分らしく生きていくことに重きを置かれています。
ただし、不登校によって生じるリスクや不利益には十分気を付けるように、とも記されています。
この、不登校によって生じるリスクや不利益には、次項でご紹介するような方法で対応できる可能性があります。
不登校問題に関する取り組み
不登校によって生じるリスクとして代表的なものは、「勉強への遅れ」や「社会からの孤立」ではないでしょうか。
しかし、不登校中の勉強法は1つではなく選択肢が多様ですし、フリースクールや塾などを利用することで他者と交流する機会を得られる場合があります。
不登校への対応で重要なのは、スモールステップ。
どのようなステップをたどればよいかについては、“親子で取り組む不登校への対応スモールステップで進める詳しい対応をご紹介”の記事で順を追って詳細にご紹介しています。
休息や他者交流といった活動など、お子さまに合ったペースで対応をとることで、不登校によって生じるリスクを減らせる可能性があります。
4.まとめ
今回は、不登校の人数に関する最新のデータをもとに、その原因や対策まで幅広くご紹介しました。
不登校の人数を見ると、決して他人事ではなく、いつでも当事者になる可能性があるのだと感じますよね。
しかし、上記に挙げたような原因や取り組みを少しでも頭に入れて置くことで、焦りや不安を減らせる場合もあります。
誰にでも起こりうる問題だからこそ、まずはきちんと正確な情報を知っておくと安心ですね。