
学習コラム
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不登校において、お子さまやその保護者様の大きな気がかりは「不登校期間のその後」ではないでしょうか。
実際、不登校経験者とそうでない人では、その後の人生に若干の違いがあるようです。
今回は、データをもとに不登校のその後の選択肢や、不登校経験者のその後の思いについてご紹介します。
不登校のその後
不登校のその後の心配と一口に言っても、「いつ」不登校になったのかによって、その後への悩みの種類は変わってきます。というのも、不登校のお子さまが小学生なのか、それとも中学生なのかによってその後の選択肢は異なるのです。
そこで、不登校時期が小学生か、あるいは中学生かの2つに分け、その後の一般的な選択肢をご紹介します。
小学校の不登校
小学生で不登校になった場合、その後の選択肢は主に以下の2つです。
- 校区の中学校に進学する
- 中学受験によって国立あるいは私学の小学校に進学する
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
①住んでいる校区の中学校に進学する
1つ目は、通っている小学校と同様、校区の中学校に進学するというものです。校区の中学校は、小学校時とメンバーが変わらないことがほとんどですよね。
ですので、お子さまの不登校の原因が友人関係でない場合や、極端な環境の変化を嫌うお子さまの場合、そのまま校区の中学校に進学するのも方法の一つです。
地元の公立中学校であれば学費もかかりませんし、中学校で新たに始まる部活動といった経験がお子さまの良い刺激になり、自主的な登校が促されるケースもあります。ただし、お子さまの不登校の原因が友人関係にある場合、良くも悪くも環境・メンバーが大幅に変わらないことが登校再開を妨げるケースがあります。
②中学受験で国立・私立中学校に進学する
2つ目は、中学受験をして国立あるいは私立の中学校に進学するというものです。
お子さまの不登校の原因が、前項でもご紹介した「友人関係」である場合、校区外の中学校に進学すれば環境・対人関係をガラリと変えることができます。しかし、中学受験を突破するには一定の学力が求められますし、受験校によっては小学校時の出席日数をチェックされる場合もあります。
また、お住まいの地域によっては、そのような学校がほとんど無い場合もあります。さらに、私立中学校は学費が高額なケースも多く、容易な選択肢とは言い難いでしょう。
中学生の不登校
中学生の不登校の場合、進路選択という点で保護者様はその後への焦りを一層募らせるかもしれませんね。
中学生で不登校になった場合のその後の選択肢は主に以下の2つです。
- 高校進学(全日制あるいは通信制)
- 就職
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
①高校進学(全日制あるいは通信制)
文部科学省の発表によると、現在の日本における高校進学率は97%を超えており、「中学卒業後の進路=高校進学」という考えが一般的ですよね。しかし、不登校経験者の高校進学率は85%であり、不登校という経験はその後に影響していることがわかります。
高校進学には多くの場合、受験が伴います。
不登校によって学力が懸念される場合、まずこの受験を突破できるかというのが第一関門と言えるでしょう。そして入学できたとしても、中学校時と同様に欠席していると進級が危ぶまれます。入学後、留年しないかどうかが第二関門と言えます。
このように全日制高校に通うことで進級が危ぶまれたり、不登校生活からいきなり毎日登校する生活を送ることが難しい場合、通信制高校という選択肢もあります。進学の選択肢を減らさないよう、不登校中も勉強は続けておきたいですね。
不登校中の勉強法については、以下の記事で詳しく紹介していますので併せてお読みください。
②就職
中学校卒業後、就職をするという選択肢もあります。それまでの学生生活とガラリと環境を変え、自立した生活を送ることで心境に良い変化が生まれるケースもあります。
しかし、中学卒業と同時に就ける職業には限りがあり、低賃金であるケースも珍しくありません。就職は一見自立への近道に見えますが、その分苦労も伴うことを念頭に置く必要があります。
データで見る「不登校経験者のその後」
ここまで、不登校になったその後の進路選択肢をご紹介しましたが、特に中学生で不登校になったお子さまが実際に選んだ進路はどのようなものでしょうか。
文部科学省が平成26年度に実施した調査では、平成18年度に不登校であったお子さまの5年後の状況が具体的に公表されていますので、ご紹介します。
● 中学校卒業後の高校進学率
高校進学率 85% (そのうち中退が14%)
● 20歳時点の就学・就業状況
就業のみ 35%
就学のみ 28%、
就学・就業 20%、
非就学・非就業 18%
●20歳時点の就学先
大学・短大・高専 23%
高等学校 9%
専門学校・各種学校等 15%
● 20歳時点の就業状況
正社員 9%
パート・アルバイト 32%
家業手伝い・会社経営 3%
不登校経験があっても、一見その後の生活に影響はないように見えますね。
しかし、20歳時点の「非就学・非就業」の割合は18%。
総務省が平成19年に実施した就業構造基本調査によると、上記の調査対象者とほぼ同年代である15歳から19歳の「非就学・非就業」の割合は、2.3%です。
(出所:総務省「就業構造基本調査)
2つの調査は、調査時期・対象者が完全に一致しているわけではないので、結果を一概に比べることは好ましくありません。しかし、やはり18%という数字は顕著に高く、「不登校がその後に影響している」と考えるのが自然ではないでしょうか。
実際、以下のような研究報告もあります。
不登校経験者はそうでない人に比べて「学歴達成が下がる・雇用形態は非正規雇用や無職が多い・婚姻率が下がる」傾向がある
出所:井出草平「不登校がその後の生活に与える影響-学歴達成・雇用形態・暮らし向き・結婚-」
とはいえ、不登校中の対応によっては、その後に変化をもたらす可能性に期待できるため、お子さまのペースに合わせてその後を見据えていきたいですね。
不登校経験者のその後の思い
お子さまが不登校になると周囲の大人はその後が気がかりですが、一番需要なのは、当事者であるお子さまは何を考え、どう受け止めているのかということ。
前項の「不登校に関する実態調査」では、20歳になった不登校経験者が改めて考える「不登校経験を経た思い」も併せて公表されていますので、ご紹介します。
不登校経験のメリット
調査対象者による不登校経験のメリットは、以下です。
- 休んだことで今の自分がある
- 成長した・視野が広がった
- 人とは違う経験をした
- 人に優しくなった
不登校について振り返りながら、前向きに人生を歩んでいることがうかがえます。
不登校経験のデメリット
調査対象者による不登校経験のデメリットは、以下です。
- 勉強、友人、進路などにマイナスな影響があった
やはり当事者も、不登校がその後の進路などに影響したことを実感しているようです。
しかし、不登校中の学習継続や、お子さまにあった不登校への対応法について不登校中から知っていれば、上記のデメリットをいくらか軽減できる可能性はあります。「不登校だから…」と諦めず、さまざまな情報収集をしておくことがその後にも役立ちそうですね。
不登校への対応については以下の記事で詳しく紹介していますので併せてお読みください。
まとめ
今回は、不登校のその後についての選択肢や、実際の“不登校のその後”をデータをもとにご紹介しました。
不登校がその後の人生にいくらかの影響を与えることはありますが、それをどう捉えるかは当事者の受け止め方によっても異なるようです。
不登校中の対応がその後の選択肢を増やす可能性も十分にありますので、ぜひ情報を収集し、活用してみてくださいね。