
学習コラム
正しく学ぶ方法や成績の伸ばし方、
不登校に悩まれている方のための
情報を発信しています。

不登校と聞くと、学校に行けていない状態を想像する方が多いでしょう。
しかし、不登校に関連する用語は多々あり、それぞれ定義が異なります。実際には何日欠席すると不登校なのか、お子さまは「不登校」と呼ぶ状態にあるのかといった正しい知識を知っておくことは、その後の進路選択などにおいても重要となります。
そこで今回は、不登校の定義をはじめ、最新の実態や対応について文部科学省のデータを元に詳しく解説します。
もくじ
不登校の定義
現在、お子さまの欠席や遅刻・早退で悩まれている保護者様の中には、我が子が「不登校」と呼べる状態にあるのか気になる方もおられるのではないでしょうか。
実は、不登校や不登校に関連・類似する言葉にはそれぞれ定義があり、内容は少しずつ異なります。ここでは、不登校の定義を中心に、関連用語について解説していきます。
文部科学省による不登校の定義
文部科学省が定める不登校の定義は以下の通りです。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの。
引用:不登校の現状に関する認識
ポイントは、「登校しないあるいはしたくともできない状況」という部分です。病気や学費が払えないといった経済的な事情による欠席は含まれません。
つまり、そういった特別な理由なくお子さまに学校に行けなくなってから30日以上経っていれば、「不登校である」と言えます。
かつて文部科学省は、「不登校とは50日以上欠席している状態」としていましたが、平成10年以降は不登校の定義が明確化され、「30日以上」となりました。
また、今ほど不登校問題が話題になっていなかった頃は、「登校拒否」という言葉がしばしば用いられてきました。しかし、児童生徒が意図的に登校を拒否しているのではなく、さまざまな理由によって「行けない」状態にあるケースが多いことから、「不登校」という呼び方がメジャーになっていったのです。
法律上の不登校の定義
法律上の不登校の定義は、以下のように定められています。
何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)。
大まかには、上記の文部科学省による定義と同様ですが、一つ異なるのは「30日以上」という欠席日数の基準の有無です。
準不登校とは?
準不登校とは、一般的に保健室登校や遅刻・早退の日数も考慮し、欠席日数が15日以上30日未満であるものをいいます。国による調査では、この準不登校は「不登校相当」として扱われています。
なぜ一概に「不登校」と定義しないかというと、長期間欠席しているか否かの判断ポイントを欠席日数だけにしないためです。
たとえば、29日間学校を欠席している状態が続いている場合は、不登校の定義である「欠席が30日以上」の基準を満たしていないため、「不登校」とは呼べません。しかし、不登校と呼べないからといって、29日間学校に行けていない状態が正常かと問われれば、それは少し違うと感じる方が多いでしょう。同様に、欠席はしていなくても保健室登校や遅刻・早退が当たり前になっている状態は、不登校とは呼べなくても何らかの対応が必要といえますよね。
このように、本格的に不登校になりそうなお子さまを初期の段階で見つけ出し、対応するための指標として「準不登校」という名称が用いられています。
長期欠席と不登校の違い
長期欠席とは、不登校の基準では含まれていなかった病気や経済的な事情により欠席している状態をいいます。
つまり、お子さまご本人の意思に反したやむを得ない事情による欠席といえます。繰り返しになりますが、「不登校」とは、この病気や経済的な事情を除く欠席が当てはまります。
ひきこもりと不登校の違い
ひきこもりは、一見不登校と類似した言葉のように聞こえますが、対象年齢の有無という点で異なります。
不登校は学校に行かない(行けない)児童生徒を指しますが、ひきこもりに年齢は関係ありません。学校などの事情関係なく、6か月以上家に閉じこもったままの状態を「ひきこもり」と呼びます。
不登校と引きこもりの関係性について、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
不登校とひきこもりって関係ある?ひきこもりにならないためにできること
文部科学省による不登校調査
文部科学省は、不登校の定義をもとに毎年不登校の実態について調査し、改善を図っています。しかしながら、少子化であるにもかかわらず不登校児童生徒の人数は増加の一途をたどっています。
具体的に不登校はどれくらい存在するのか、最新の調査データをもとにご紹介します。
不登校の子どもの実態
令和3年度に文部科学省が実施した調査によると、小中学校における不登校児童生徒は244,940人いることが明らかとなっています。この驚異的な人数は年々増え続けており、国には早急な対応が求められています。
最新の不登校人数の詳細は、以下の表の通りです。
出典:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
中学生の不登校人数が顕著であることがわかりますね。
また、この不登校児童生徒の半数以上が90日以上の長期欠席状態にあることが報告されています。不登校の期間が長引くほど、登校再開へのハードルは上がります。それは、不登校になっているお子さまご自身が一番自覚し、悩んでいることでもあります。
不登校の原因
では、これほどまでにお子さまたちが登校できなくなっている理由は何なのでしょうか。
文部科学省は、前述の調査にて不登校の原因についても公表しています。
学校が原因
不登校の原因1つ目は、学校によるものです。一般的に「不登校」と聞くと、この学校との問題を想像される方が多いのではないでしょうか。
学校が原因の不登校とは、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- いじめ以外の友人トラブル
- いじめ
- 成績不振
- 入学・進級などにおける環境への不適応
- 教員との関係
お子さまたちの人間関係は年を重ねるごとに多様化し、複雑になっていきます。それは、交友関係が広がる反面、トラブルにも繋がりやすくなっていきます。
直接的ないじめとまではいかずとも、友人間の些細な揉め事やすれ違いはときにお子さまの心を深く傷つけ、学校を拒否するまでに影響を及ぼしてしまうこともあります。
さらには年々難易度の増す学業、教員との関係づくりなど、日々学校生活を送りながらお子さまは社会について学んでいきます。
乗り越えるべき課題がさまざまある中で、それをあまり意識しなくてもこなせるお子さまもいれば、達成するまでに時間がかかってしまったり失敗を長く引きずってしまったりするお子さまもいます。後者のような場合でも、なんとか前向きでいられるお子さまもいるでしょうが、そうではなく、不登校に至ってしまうケースもあります。
学校が原因の不登校は、さまざまなトラブルやお子さまの性格が複雑に絡まりあっている状態と言えます。
家庭が原因
不登校の原因2つ目は、家庭によるものです。
家庭が原因の不登校とは、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- 親子のかかわりに関するトラブル
- 家庭環境の急激な変化
- 家庭内の不和
家庭の問題と不登校が関連することに疑問を抱かれる方もおられるでしょう。しかし、お子さまの性格や考え方は育った環境に大きく影響されています。お子さまにどのような性格形成がなされているかによって、何らかのトラブルに直面した時に不登校になりやすいのか、それとも乗り越えられるのかも変わってくるでしょう。
また、たとえば保護者様がお子さまに無関心であったり親子間のコミュニケーションが極端に少ない場合、お子さまは学校で何らかのトラブルを抱えていても相談することができません。
常に不安感がつきまとい、心が満たされない状態が続きます。適切に不安感が払拭できないため、登校をしないことでトラブルを避けようとしてしまいます。
また、保護者さまの離婚や再婚といった環境の変化は、一時的にお子さまの心に不安をもたらします。不安な状態で、学校生活を頑張ることは大人でも難しいですよね。
このようなケースでは、なにも保護者さまの事情や選択が間違っているというわけではありません。その時々でお子さまにも意見を尋ねたり不安に寄り添ったりすることが大切といえます。
本人が原因
不登校の原因3つ目は、本人によるものです。本人が原因の不登校は、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- 無気力・不安
- 生活リズムの乱れ・非行
実は、無気力や不安によって不登校になるお子さまは非常に多いのです。小学校、中学校いずれも、不登校の原因の約半数がこの無気力・不安によるものです。いじめなどのはっきりとした理由はなく、ただ漠然と「登校したくない」という状態に陥っていることが特徴です。
お子さま本人も何が嫌で登校できないのか自覚できていないケースも多く、そのために保護者様は焦ったりイライラしたりすることがあります。また、気力が湧かないために日中疲れることがなく、昼夜逆転生活になりやすいと言われています。
しかし無気力が原因の不登校は、登校再開までにある程度の共通したステップを踏むことが知られており、周囲はその時々に応じた対応をとることでお子さまを適切にサポートすることができます。
無気力による不登校やその対応に関する詳細は、以下の記事でご紹介しています。
無気力型の不登校ってどんな状態? 回復までのステップと対応をご紹介
不登校への基本的な対応
上記のような原因で不登校になった場合、保護者にできる基本的な対応は共通しています。
具体的には、以下の3点です。
- 不登校を受け止め、休息させる
- 学校に相談し、常に連携をとる
- 家庭外の居場所を作る
保護者様が焦りすぎることは、お子さまを追いつめ、不登校という問題を悪化させるにすぎません。
問題を家庭内だけで抱え込みすぎず、学校など外部との関係を持ちながら長い目で対応していく必要があります。
また、文部科学省は不登校問題に対して以下の方針を定めています。
- 登校再開だけをゴールとするのではなく、児童生徒が主体性を持って自立する
- 不登校によるリスクは念頭に置いておく
不登校が生み出す問題には考慮しつつも、登校再開だけに執着するのではなく、お子さまの主体性を尊重していこうとする姿勢がうかがえますね。
以下の記事では、不登校の原因や取り組みについてさらに詳しくご紹介しています。
不登校の原因とは?文部科学省の最新情報をもとに背景や対応法を解説!
不登校によって生じる問題と対策
ここまで、不登校の定義や人数、原因についてご紹介してきました。
文部科学省による不登校定義のポイントは、30日以上の欠席。
30日以上欠席すると、不登校になった元々の原因に加えて、新たな問題が生じる場合が多くあります。
たとえば、勉強への遅れもその一つ。勉強に遅れている不安感や、「今から登校したところで追いつけないのでは」という諦めによって登校への意欲が消失してしまい、より登校が遠のきやすくなります。
このような問題に対応するべく、文部科学省では「不登校中であっても学びを保障する」ことを目的に、新たな取り組みが始動しています。
具体的には、以下の3点です。
- 不登校児童生徒全員の学びの場を確保し、学びたいと思ったときにいつでも学べる環境を整える
- 心の小さなSOSを察知し、教員やスクールカウンセラーなどで構成する「チーム学校」で支援する
- 学校の風土を「見える化」して、どの児童生徒も安心して学べる学校にする
不登校中であっても常に学べる環境が整えられていたり勉強面での不安を解消できたりすることは、お子さまの進路の選択肢を増やすことにも繋がります。また、このような取り組みは、不登校児のその後の人生を豊かにするためにも重要といえるでしょう。
「COCOLOプラン」と名付けられたこの最新の対策が、不登校問題においてどう機能するか、今後に期待していきたいですね。
まとめ
今回は、不登校の定義を中心に、不登校の最新の実態や対応、新たな取り組みまで幅広くご紹介しました。
まずは、お子さまが不登校と定義される状態にあるのかきちんと把握しておくことで、その後の対応や選択の幅が変わっていきます。文部科学省をはじめとした最新の情報を常に取り入れながら、適切に対処していきましょう。