
学習コラム
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お子さまが不登校になってしまった際に、保護者様にとって大きな心配になるのは出席日数や内申点ではないでしょうか?学年が上がるにつれ、受験等の進路の問題にも関わり、焦りも大きくなると思います。
実は不登校生でも「出席扱い」になる方法は様々あります。
特に注目すべきは文部科学省により、令和元年に発表された「家庭に引きこもりがちで十分な支援を受けられない不登校の児童生徒に対し、ICT等を活用した自宅学習で出席扱いにする」という方針です。
出席扱いのハードルが下がったことで、不登校でお悩みの生徒や保護者様の負担も軽くなるのではないでしょうか?この記事では出席扱い制度の利用方法や、制度を利用した際の内申点の仕組み、メリットや注意点まで詳しくお伝えします。
文部科学省認定の出席扱い制度とは?
不登校生でも、自宅学習が出席扱いになる制度はご存じでしょうか?
中学校は義務教育なので、出席数が足りなくても基本的には卒業をすることができます。ただ、日本の高等学校等への進学率は、女子95.7%、男子95.3%ととても高い水準にあるため、一般的には「高校へ行くのはあたりまえ」という価値観をお持ちの保護者様も多いと思います。
出所:男女共同参画局「教育をめぐる状況」
一つご安心いただきたいのが、文部科学省が認定した出席扱い制度を利用することで、不登校生でも高校受験の選択肢を広げることができます。
特に在宅学習だけで出席扱いになる方法だと、より出席日数を確保しやすいため、少しでも勉強に意欲のあるお子さまには積極的にご利用して頂きたいところです。
ただ、まだ出席扱い制度利用の前例がない学校も多く、制度自体を詳しく知らない保護者様も多いと思いますので、以下ではICT(オンライン学習)を利用した自宅学習で出席扱いになるパターンに絞って解説します。
ICTを活用した自宅学習を利用した出席扱い制度利用者が増えている
「ICT等を活用した在宅学習」というのはオンライン学習のことで、一番簡単に不登校生が出席扱いになる方法です。
文部科学省の発表では、令和3年度の小学校における不登校児童の人数の81,498人中の4,752人がICT等を活用した在宅学習で出席扱いとなっています。また、中学校における不登校生徒の人数は、163,442人中6,768人がICT等を活用した在宅学習で出席扱いとなっています。
まとめると
- 小学生→不登校生17人に1人
- 中学生→不登校生24人に1人
こちらの割合でオンライン学習を利用した在宅学習で出席扱いとなっているということです。
また、コロナ禍になってから出席扱い制度を利用する生徒が急激に増えていることが下記の図から分かります。
出所:令和5年度 文部科学省「COCOLOプラン」をもとにサブスタ作成
令和2年度までは200人に1人の割合だった状況と比べても10倍、例年と比べるとなんと40倍の人数に増えています。
オンライン学習で出席扱いになる?
文部科学省は令和元年の通知で、不登校生徒に対する多様な教育機会の確保の一環として、ICTを活用した在宅学習で、要件を満たすなら出席扱いにするとしています。
我が国の義務教育制度を前提としつつ、一定の要件を満たした上で、自宅において教育委員会、学校、学校外の公的機関又は民間事業者が提供するICT等を活用した学習活動を行った場合、校長は、指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる。
このように明記されていますので、次項の7つの要項を満たしており、ICT教材を使った学習を学校とのルールを元に行った際に、出席扱いとして認められます。
また、令和3年3月に文科省から通知されたCOCOLOプランの中のICT教材に関連する内容は以下になります。
自宅等において ICT 等を活用した学習活動については、可能な限り、指導要録上出席扱いとするとともに、本人の進学等の意向等を考慮し、学習評価を行い、その結果を評定などの成績評価に反映することが望ましいこと。
このように各都道府県の教育委員会に対して、
- 出席扱いにすること
- テストを受けた際に内申点をつけること
この2点を強く通知していることから、制度利用の前例がない学校でもよりスムーズに利用できるようになると考えられます。
出席扱い制度自体が令和元年に発表され、まだまだ認知が少ないことから、申請した生徒様の全員が利用できていないことが現状でした。今回のCOCOLOプランの通知でよりスムーズに利用できる生徒様が増えるのではないでしょうか。
ICT等を活用した在宅学習が出席扱いになる要件
文部科学省が定めた、ICT等を活用した在宅学習を出席扱いとするための要件は以下のように全部で7項目あり、それらの条件をクリアしていれば出席扱いになります。
- 保護者と学校との間に連携・協力関係があること
- ICTなどのオンラインを活用した学習プログラムであること
- 学校の先生による訪問等による対面指導が適切に行われること
- 生徒の今の学力に合わせた計画的な学習プログラムであること
- 校長が対面指導や学習活動について十分に把握していること
- 生徒が学校外の公的機関や民間施設等で相談・指導を受けられない状態にあること
- 学習活動の成果を成績に反映する場合は、学習内容が学校の教育課程と合っていること
不登校期間中に自宅で自分のぺースで学習でき、フリースクールに通う等の他人とのコミュニケーションを取らずとも、簡単に出席扱いになることは非常に便利でお勧めです。
在宅学習で出席になった場合の評価について
不登校の生徒の出席が認められる場合、どのように内申点等に評価されるか心配な方も多いと思います。
実際に出席扱いが認められた際の学校評価について順番に解説します。
内申点とは?
学校評価についてお話しする上で、避けて通れないのが『内申点』についてです。
実際、知っているようでよく知らない生徒様や保護者様も多いと思います。
内申点とは、ずばり内申書(調査書)に記載される9教科を1~5点満点で評価し、45点満点の成績のことをいいます。
ただ、東京都では実技4教科は2倍になったり、各都道府県が定める計算方法はバラバラで、お住まいの地域の教育委員会のホームページや在籍校の担任の先生に確認する必要がありますのでご注意ください。
- 45点満点の点数で、行ける高校の選択肢が決まります。
内申点の点数は、お子さまが中学3年生の受験期に、在籍校から受験先の高校に提出されます。内申点と当日テストの比率としては3:7~7:3までと、各都道府県の学校ごとにかなり差がありますが、非常に重要になってきます。
内申書の実際の書類は下記のようなイメージです。
内申点の評価方法は?
まず内申点とは、中学校で学習する教科の評定を5点満点で算出しており、
- 【知能・技能】
- 【思考力・判断力・表現力】
- 【学習に取り組む態度(主体性・人間性)】
この3観点で評価されます。
こちらは2021年度に改正したばかりの新しい観点です。
①【知能・技能】の評価の方法
「知識・技能」の評価の考え方は、従前の評価の観点である「知識・理解」、「技能」においても重視してきたところです。具体的な評価方法としては、例えばペーパーテストにおいて、事実的な知識の習得を問う問題と、知識の概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮するなどの工夫改善を図る等が考えられます。また、児童生徒が文章による説明をしたり、各教科等の内容の特質に応じて、観察・実験をしたり、式やグラフで表現したりするなど実際に知識や技能を用いる場面を設けるなど、多様な方法を適切に取り入れていくこと等も考えられます
②【思考力・判断力・表現力】の評価の方法
「知識・技能」の評価の考え方は、従前の評価の観点である「知識・理解」、「技能」においても重視してきたところです。具体的な評価方法としては、例えばペーパーテストにおいて、事実的な知識の習得を問う問題と、知識の概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮するなどの工夫改善を図る等が考えられます。また、児童生徒が文章による説明をしたり、各教科等の内容の特質に応じて、観察・実験をしたり、式やグラフで表現したりするなど実際に知識や技能を用いる場面を設けるなど、多様な方法を適切に取り入れていくこと等も考えられます。
③【学習に取り組む態度】の評価方法
「思考・判断・表現」の評価の考え方は、従前の評価の観点である「思考・判断・表現」においても重視してきたところです。具体的な評価方法としては、ペーパーテストのみならず、論述やレポー卜の作成発表、グループや学級における話合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れたり、それらを集めたポートフォリオを活用したりするなど評価方法を工夫することが考えられます。
出所:文部科学省「学習評価の在り方ハンドブック」
簡単にまとめると
- 【知能・技能】=定期テストの成績
- 【思考力・判断力・表現力】=クラス内での発表等
- 【学習に取り組む態度】=宿題等の提出物や授業態度
となります。
出席扱い制度利用の場合の内申点は?
出席扱い制度利用の場合の評価は、通常の評価とは異なってきます。
不登校の生徒にとっては、在宅での学習が出席扱いが認められた場合、①【知能・技能】の評価が付くことになります。
出席と認められない場合は「評定不能」となりますが、こちらが「内申1」となります。
①【知能・技能】の評価で「内申2・3」を取るためには、定期テストを受ける必要があります。こちらも保健室や別室で受けることができるよう配慮している中学校も増えてきているので、「内申3」も取りやすくなってきています。
「4・5」を取るためには②【思考力・判断力・表現力】③【学習に取り組む態度】の評価を受ける必要があるため、学校への再登校が必要となります。
したがって、出席扱い制度を利用したうえで定期テストを受けることができれば、「内申オール3」を狙えるということになります。
内申オール3あれば、受験時の高校選びの際の選択肢も増えてきますので、定期テストを受ける意思のある不登校生は出席扱い制度を絶対に利用すべきと言えるでしょう。
出所:ICTを用いた在宅学習における出席・学習評価のガイドライン
中学校卒業後の進路については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご確認ください。
不登校の小中学生は将来どうなる?4つのポイントを解説します!
学校評価以外のメリットについて
- 気持ちが前向きとなり登校意欲が上がる
- 学習習慣が身に付き、毎日の勉強が楽しくなる
- 学力が身に付くことで、勉強に対する自信がつく
まず、第一に自宅学習に対しての『やる気』が上がります。
出席扱い制度を利用する上で、学習した成果(証拠)を在籍校の先生に確認していただく必要が出てきますので、自宅でのお子さまの頑張りが『出席』という形で評価されることになります。自分の頑張りが評価されることで気持ちが「前向き」となり、自己肯定感が上がり様々な心境の変化が起きます。
実際に出席扱い制度を利用したことが「きっかけ」となり、毎日の勉強習慣が身に付いたことで欠席日数がゼロになった生徒様もいらっしゃいます。仮にお子さまが再登校を望んでいなかったとしても、様々な意味で不登校期間中の出席扱いはメリットしかないと言えます。
実際に出席扱い制度を利用してみよう
お子さんがご自宅で学習できる状態になりましたら、実際に出席扱い制度を利用してみましょう。
在籍校の校長先生の判断次第にはなりますが、上記のようなステップでご利用いただきます。
それでは順番に解説していきます。
①担任の先生に相談する
出席扱い制度を利用するためには、まずは在籍校の担任の先生に相談するところから始まります。
電話で「在宅学習で出席扱いになる制度を利用したいのですが、どのようにすればよいでしょうか?」と相談してもいいですし、三者面談の際にご利用になる予定のオンライン学習のパンフレットを渡すとよりスムーズです。
まだ認知が広まっていない制度なので、前例がなかったり、担任の先生が制度そのものを知らない場合もあります。その場合は先生に調べていただき、制度を知ってもらうところから始めましょう。
②校長先生に認めていただく
担任の先生に出席扱い制度を利用したい旨が伝われば、次は校長先生(学校によっては教頭先生や副校長先生の場合もあります)に話が伝わります。ここで前例がある学校の場合は、スムーズに認めてもらえる場合があります。
場合によっては先生達の中で協議が行われたり、管轄の教育委員会へ制度利用の為の情報収集で時間がかかる場合もあるので、保護者様はじっくり待ちましょう。最終的に校長先生がどのように判断したのか保護者様へは連絡がいくはずです。
③学習計画を立てる
制度利用が決まれば、学校とのルール・計画を作ります。
一日、何をどれだけ学習すれば出席扱いとしてもらえるか、担任の先生とルールを作りましょう。
ここで出席扱いになるにはどれくらい1日勉強すればいいの?と疑問に思うと思います。ご安心いただきいたいのが、「1日の勉強量は生徒が自分自身で決めれる」ということです。
大事なことは、学校と決めたルールに沿ってコツコツ続けるということなので、出席扱い制度に学習量は関係ないと言えます。お子さまが継続できるよう、無理がない範囲で学習ができるようあらかじめ相談することが大事です。
④計画に沿って映像授業を見て学習する
ICT教育とは、インターネットを活用してコンピューターやタブレット機器を使ったアナログではない教育のことを指します。
ここで重要なのはインターネットを介して、第三者に学習の状況を確認してもらえるかどうかという点です。先生達も生徒のことを信用していない訳ではないと思いますが、出席扱いにするにあたって、正確な学習状況の把握を求めているのだと考えられます。
保護者様の以外の第三者のサポートのあるオンライン教材を利用して、映像授業を見て学習を進めてください。
⑤学校に進捗レポートを提出する
オンライン教材を利用した学習の進捗を、学校の先生と決めた頻度で提出しましょう。
提出の方法も、メールやLINE等のSNSを使って送信するのか、対面面談の際に印刷して提出するのか、制度利用が決まった段階であらかじめ決めておくとスムーズかもしれません。
出席扱い制度を利用する上での注意点
文部科学省から全国の教育委員会に、不登校生でも一定の基準を満たせば出席扱いにするようにとの通達が出ていることは事実ですが、必ずしも、全ての生徒が出席扱い制度利用がスムーズに認められるとは限りません。場合によっては数週間~数カ月、すぐに認められないケースもあります。
その理由は、出席扱い制度を利用して、学校外での活動やオンライン教材を利用した在宅学習を出席扱いにするか否かは、全て在籍校の校長先生によって判断されるからです。とくに学校運営する上での校長先生の運営方針が判断基準になります。
出席扱い制度を利用する上で、弊社にも毎日たくさんのご相談をお受けしていますが、ごくごく稀にスムーズに進まないパターンもあります。
- 校長先生の方針があくまで再登校することなので、在宅学習での出席扱いは認められない
- 指導要録上は出席扱いにするが、定期テストを受けても評価はしない。(成績が良くても1)
- 必ず週に1回は対面面談をしないと出席扱いにしない(対面が難しい生徒の場合でも)
このような場合は、生徒・保護者様の要望が通らず、制度がうまく利用できない場合もあります。制度利用がスムーズに進まない場合は、お住まいの市区町村の教育委員会に相談することで解決することが多いので覚えておきましょう。
不登校の生徒が出席扱いとなるその他の方法
続いてオンライン学習以外で不登校の子が出席扱いとなるケースについてご紹介します。
保健室やカウンセリングルームなどの別室登校
京都府教育委員会(平成22年)では、別室登校について以下のように定義しています。
不登校傾向の児童生徒が学校に登校している間、定められた通常の教育活動から離れて、常時もしくは特定の時間帯に相談室や保健室などの校内の別室(や他の場所)で、個別もしくは小集団で活動している状態
出所:京都府教育委員会平成 22 年度「別室登校」研究Ⅰ-実態把握と支援の在り方-
保健室や相談室などで、授業自体は受けられないものの、出席することで条件付きで出席扱いとなる場合があります。
※こちらは学校長の判断や自治体の方針にもよるところがあるので、不登校になったお子さまの状況に合わせて在籍校の担任の先生やカウンセラーさんに相談するとよいでしょう。
教育支援センター(適応指導教室)
適応指導教室とは、教育委員会が設置した以下のような教室になります。
不登校児童生徒等に対する指導を行うために教育委員会が、教育センター等学校以外の場所や学校の余っている教室等を利用して、学校生活への復帰を支援するため、児童生徒の在籍校と連携をとりつつ、個別カウンセリング、集団での指導、教科指導等を組織的、計画的に行う組織として設置したもの
学校復帰を前提としているため、この施設を利用する場合、最終的には不登校状態から抜け出し学校に復帰できるように学習面だけでなく、生活面や心理面もサポートしてくれます。
こちらも多くの自治体が活動に参加していれば出席扱いにしてくれます。
民間のフリースクール・民間の不登校生を支援している塾
民間の不登校生を支援しているフリースクールや塾があります。お子さまのペースに合わせて支援してくれる施設も多く存在しています。
民間のフリースクールや民間の不登校生を支援している塾も、条件がそろえば学校に通えなくても出席扱いとなる可能性があります。
文部科学省のホームページで発表されている条件を以下に明記します。
【民間の施設の活動に参加することで出席扱いとなることについて】
学校外の施設における相談・指導が不登校児童生徒の社会的な自立を目指すものであり、かつ、不登校児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず、不登校児童生徒が自ら登校を希望した際に、円滑な学校復帰が可能となるような個別指導等の適切な支援を実施していると評価できる場合、下記の要件を満たせば、校長は指導要録上出席扱いとすることができる。
続いて、フリースクールや塾に通う事で出席扱いになる要件は以下になります。
- 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
- 民間施設における相談・指導が適切であるかどうかは、「民間施設についてのガイドライン」を参考に、校長が教育委員会と連携して判断すること
- 当該施設に通所又は入所して相談・指導を受けること
- 学習成果を評価に反映する場合には、当該施設における学習内容等が学校の教育課程に照らし適切であると判断できること
このように、まずは在籍校の校長に認めていただき、在籍校と通う予定のフリースクールと教員委員会と連携できる場合、出席扱いと認めてもらえる可能性があります。
出席扱い制度に関してのまとめ
